研究内容
研究概要
水素貯蔵物質
現在,水素エネルギー社会の実現を目指して様々な研究が行われています。
その水素エネルギーを使う上での一つの問題点が,燃料である水素を貯蔵する方法です。
そこで,私達は,水素を大量に安全に貯蔵できる物質を研究しています。
特に,軽元素を用いた水素貯蔵物質に注目しており,リチウム(Li)系,カーボン(C)系,マグネシウム(Mg)系の物質を研究しています。
二次電池
蓄電デバイスとして広く利用されているリチウムイオン二次電池は,更なる高エネルギー密度化,また,安全性の向上を目的として,様々な研究が行われています。私たちの研究室では,リチウムイオン二次電池の全固体化に関する研究を行っています。イオン伝導体として無機固体材料を用いることで,発火の危険性が低く,高い安全性を持つリチウムイオン二次電池を実現することができます。
水素製造
水素製造の研究では,地球上に豊富に存在している「水」から太陽光を利用して熱化学的な手法で「水素」を製造する技術を確立することを目的とし,物質科学の観点から新しい反応系の探索及び制御システムの開発を行います。具体的には,太陽光を集光することで得られる温度以下(500 °C以下)で,酸化物を用いた多段階の化学反応を利用し,「水」を「水素」へ変換する反応系について検討します。
アンモニア
アンモニアは高い重量・体積水素密度を有しており,効率的に水素を貯蔵・輸送することができる媒体として注目されています。そこで私達は,アンモニアから高圧水素を発生させる手法として,液体アンモニアの電気分解反応や金属水素化物の加安分解反応,また安全にアンモニアを貯蔵するための手法として,アンモニア吸蔵材料の研究を行っています。
実験装置 (Experimental equipments)
実験室 (Experimental Room)
水素化装置
遊星型ボールミル装置(Planetaly ball milling apparatus)
- 試料とボールの入ったポットを惑星のように自転・公転させて試料をミリング処理する装置。
- 主な効果は試料の一様混合のほか,物質の構造を壊したり,試料反応を進めたりと,メカノケミカルな手法を用いている。
振動型ボールミル装置(rocking mill apparatus)
- ポットを2種類の方向に振動させるミリング装置。
- 遊星型と同じく試料を一様混合・構造破壊・反応を進めるために用いるが,特に金属アミド化物を作成するときなどはこの装置を使用する。
熱重量・示差熱・昇温脱離質量数分析装置(Thermogravimetry-Differential Thermal Analysis-Mass Spectroscopy ; TG-DTA-MASS)
- 熱重量分析では試料を昇温し,重量変化を連続的に測定することができる。この装置は示差熱分析と組み合わされており,重量変化が発熱または吸熱反応のどちらによるか,あるいはDTA曲線の変化が重量変化を伴うかどうかを判別することができる。
- 試料を昇温することにより放出されるガスは質量数別に検出され,温度・時間に対するガスの放出スペクトルを得ることができる。
- <仕様>
- 質量数: 1 - 200
温度範囲: RT - 1000 ℃ *Al容器: < 500 ℃,Al2O3容器: < 1000 ℃
キャリアガス: ヘリウム,アルゴン
昇温速度: 5 - 20 ℃/min
フーリエ変換赤外分光分析装置(Fourier Transform Infrared Spectroscopy ; FT-IR)
- 試料に赤外領域の光を照射し,吸収された光の強度スペクトルから物質を同定したり,構造についての情報を得ることができる。また,拡散反射アタッチメントを用いることで雰囲気,温度制御下での測定が可能である。
- <仕様>
- 雰囲気: 不活性ガス(He, Ar, N2 …),水素(H2),重水素(D2), アンモニア(NH3))
圧力: 真空 - 1 MPa
温度範囲: 室温 - 400 ℃
高圧示差走査熱量測定(High-Pressure Differential Scanning Calorimetry ; pDSC)
- 標準物質と試料を同時に加熱し,吸熱・発熱反応によって温度差が生じた場合,その温度差を打ち消すために必要な熱量を測定する。
- 本装置は,高圧ガス雰囲気・真空下での測定が可能。
- <仕様>
- 雰囲気: 不活性ガス(Ar),水素(H2),混合ガス(H2+Ar)
*開放系,閉鎖系いずれの環境でも測定可能
圧力: 真空 - 7 MPa
温度範囲: 室温 - 500 ℃
粉末X線回折測定装置(Powder X-Ray Diffraction ; XRD)
- 物質にX線を入射し,物質からの回折線を検出する装置。
- 回折パターンは物質特有なので,得られた回折パターンから解析ソフトを使って物質を同定する。
-
- <仕様>
- 試料ホルダー: ガラスプレート (アピエゾングリス),キャピラリ
*ポリイミドシートで密閉処理することで空気非接触下の測定が可能
PCT (圧力-組成等温線)測定装置 *容量法(Pressure-Composition-Temperature apparatus)
- 圧力を変化させて平衡圧を測定する装置で,主に水素吸蔵特性を評価する。
- 容器の容量を測定することもできる。
- <仕様>
- 温度: -20 - 300 ℃
圧力: < 5 MPa
ガスクロマトグラフ分析装置(Gas Chromatography ; GC)
- 多成分系混合ガスをキャリアガスと共にカラムに通し,分離して検出することで定性・定量分析を行うことができる。
各成分はカラムとの吸着性,溶解性,化学結合力の違いなどにより分離され,熱伝導度の変化として検出される。
- <仕様>
- 分離可能なガス種: 水素(H2),窒素(N2),酸素(O2),メタン(CH4),エタン(C2H6),
二酸化炭素(CO2),アンモニア(NH3)
キャリアガス: Ar
カラム温度: 100 ℃
自動比表面積測定装置 (BET)(Micromeritics Automatic Surface Area Analyzer Gemini)
- 窒素吸着法により試料の比表面積・細孔分布を計測する。
- 吸脱着等温線測定も可能。
- <仕様>
- 吸着ガス: 窒素
測定温度: 液体窒素温度(77 K)
CHNS/Oアナライザー
- 試料を完全燃焼させて,生成した気体成分を分離,測定することによって水素の精密定量を行う。
- 水素と同時に,炭素,窒素などの測定も行うことができる。
- 水素貯蔵材料の水素量測定には一般に熱重量分析が使用されるが,炭素系物質の場合水素と共に炭化水素の放出される可能性があり,重量減少だけの情報では精密定量が難しい。
そこで,酸素燃焼水素分析を用いることにより,炭素系物質中の水素量を正確に評価することができる。
走査電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析器(SEM-EDX)
- 物質の微細領域を観察する。
- エネルギー分散型X線分析器を搭載しており,元素分析も可能。
- <仕様>
- 解像度: < 約5万倍
元素分析: 硼素(B)から
*空気非接触下で試料輸送が可能
充放電特性評価装置(Charge-Discharge Measurement)
- リチウムイオン電池の充放電特性を定電流/定電圧にて調査することができる。
- <仕様>
- 測定温度:25℃~200℃
チャンネル数:24チャンネル
ポテンショ/ガルバノスタット装置(Potentio/Galvanostat)
- 充放電測定だけでなく,サイクリックボルタンメトリー測定やインピーダンス測定などの様々な電気化学測定ができる。
- <仕様>
- 測定温度:25℃~200℃
高精度比表面積・細孔分布測定装置(Automatic Specific Surface Area/Pore Size Distribution measurment)
- 定容量型ガス吸着法により試料の吸脱着特性,比表面積,細孔分布の計測をする。
- 低温測定用ユニット(Julabo, FP-89)により±0.02℃の精度で試料部の温度を制御できる。
- <仕様>
- 吸着ガス: 水素(H2),窒素(N2),酸素(O2),メタン(CH4),アンモニア(NH3)
測定温度: 液体窒素温度, -50 - 40℃, 50 - 450℃
X線光電子分光分析装置(X-ray Photoelectron Spectroscopy ; XPS)
- 超高真空中で固体試料にX線を照射し,この際放出される光電子のエネルギー分布を測定することで、固体表面(~約8 nm)の元素の種類・存在量・化学結合状態に関する情報を得ることができる。
- <仕様>
- 測定までの過程を空気非接触で操作可能
ガスクロマトグラフ質量分析装置(Gas Chromatograph Mass Spectrometer; GCMS)
- 多成分サンプルをキャリアガスに打ち込み,カラムによって分離・検出することで,定性・定量分析を行うことができる。分子によってカラムとの相互作用が異なるため,ガス成分はGC部で分離され,MS部において更なる分離・検出が可能である。
- <仕様>
- 質量数: 2 - 1090
キャリアガス: ヘリウム(He),水素(H2)
誘導結合プラズマ発光分光分析装置(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry; ICP-AES)
- アルゴンガスに高電圧と高周波数の変動磁場を印加することで生じる誘導結合プラズマにより,試料を原子化・熱励起し,基底状態に戻る際の発光を観測することで,元素の定性・定量分析を行う。
- <仕様>
- 測定試料:溶液(<1000mg/L)
測定元素:リチウム(Li)~ウラン(U)
プラズマ最高温度:10000 K
昇温脱離ガス分析装置(Thermal Desorption Spectroscopy ; TDS)
- 超高真空中で石英ステージ上に置かれた試料を,ステージ下部から赤外線を照射することで昇温する。その際発生したガスの質量分析を行うことで,脱離ガスの定性と発生量を測定することができる。
- <仕様>
- 測定温度:1200℃
測定質量範囲:1~200 amu
フーリエ変換赤外分光分析装置(Fourier Transform Infrared Spectroscopy ; FT-IR)
- 固体試料或いは気体試料に赤外領域の光を照射し,吸収された光の強度スペクトルから物質を同定したり,分子構造についての情報を得ることができる。また,拡散反射アタッチメントを用いることで雰囲気,温度制御下で固体試料を測定することができる。
- <仕様>
- 拡散反射セル雰囲気: 不活性ガス(He, Ar, N2 …),水素(H2),重水素(D2), アンモニア(NH3))
圧力: 真空-10 MPa(拡散反射セル),真空-0.1MPa(ガスセル)
温度範囲: 室温- 400℃(拡散反射セル),室温-200℃(ガスセル)